とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
「こら!人前でいつもいつも…調子に乗るなぁ!」
「あだだだ…」
忍に耳を引っ張られて顔を歪めた右京に皆が笑う。
相川も釣られて笑っている自分に気付き、ハッとした。
不思議と悔しさが沸かない…。
今ある感情は“悔しい”より“羨ましい”だった。
派手な容姿なのにそれを鼻に掛ける事がない右京と、大人しそうなのに勝ち気で美人な忍を“いいな”と思った。
「…理想のカップルかも…」
「うんうん。俺もそう思う!」
そう言って笑うバーテンに相川も笑った。
「…貴方、なんて名前?」
「俺?“ジンヤ”っす」
「…ジンヤ君…貴方とは気が合いそう。…また来てもいい?」
彼は「もちろん」と可愛らしい笑顔を相川に見せた。