とある堕天使のモノガタリⅣ ~TORAH~



右京はいまいち納得のいかない顔をしてジッと忍を睨んだ。



「な、何よ…」



「…今一瞬間があったな…」



見透かしたようにそう言われ、忍は顔の前でブンブンと両手を振る。



「言え。本当はなんて言おうとした?」



「気のせいだって!」



「いーや、絶対間があった!」



「な、ないってば!」



二人は押し問答しながらじゃれ合って歩く。



すれ違う人達に笑われたが、意外と嫌な気はしなかった。



右京は相変わらずだが、いつもの忍なら「恥ずかしい」を連発していただろう。



ただ他愛もない、こんな小さな出来事が無条件に楽しく、右京の隣が心地よい…。



忍は拗ね始めた右京の腕に絡み付いて彼の機嫌を伺うように見上げた。



そして、“やっぱり、帰ったら教えてあげよう”とこっそり思い直したのだった。



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