とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
そもそも、今日この屋敷に右京が来る予定は無かったのだ…昼過ぎまでは。
新しい職場に勤務し始めて約1週間。
いつものように現場と事務所を行き来し、午後の作業に取り掛かろうとした時に右京宛の電話が鳴った。
それは他でもないこの男からで、右京はその時点で嫌な予感がした。
彼は嫌な予感ほど良く当たるとは良く言ったもんだと熟思う。
案の定、クドラクは丁寧な口調でこう切り出した。
『いつこっちにお戻りになられたんです?』
つまりそれは、『なんで自分には報せないのだ』と言うクドラクの愚痴だった。
会いたくないから…とは言えず、『バタバタとしてて』と適当に返答すると、電話の向こうで大袈裟な溜め息が聞こえた。