とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
『…一体どういう事だ?』
『実は入院中、彼に世話になってね…』
そう言ってダンが紹介したのは、あのDr.ベッカーだった。
ダンは先日の事件のせいで一時的に記憶の一部を喪失していた。
『で、“催眠療法”を受けたんだ…』
『あ~なるほど。…で、ドクターに話しちまったってわけか…。』
背中越しにボソボソと会話をしながら右京はだらしなく椅子に寄り掛かる。
『…彼が“紅い瞳”の持ち主なんです、ドクター。』
ダンの言葉に右京はフードを取って銀髪を軽く掻き上げた。
『…君は…!』
チラッと振り向き、『どうも』と短く挨拶をする。
『…ダン…ここはまずいんじゃないか?』
『まぁ、そうなんだけどさ…ちょっと迷っててね…』
ダンが小さくため息を着くと、独り言のように経緯を話し始めた。