とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
『あなたはモニター室を出て部下数名とシアターに歩き出した。周りははっきり見えますか?』
『はい…見えます…。皆が俺の指示を待ってる…。でも俺は…』
語り始めた彼をベッカーは注意深く観察する。
『…携帯が鳴って…アランと話してる…。』
…アラン?…誰だ?
彼の口から初めて聞く名にベッカーは首を捻った。
『…彼は何て?』
『…“特攻二人を向かわせた”…と。』
…“特攻”?
話が見えない。
だが、ここでそれについて質問してはダンの催眠が解ける可能性がある。
ベッカーはメモを取りながら『続けて』と彼を促した。
『俺は…アランに礼を言って…部下と館内に侵入した…。』
『中の様子は?』
『…暗い。観客は…思った程多くない。』
『何人くらい?』
『えっと…20人前後かな…』
ベッカーは警察から渡された資料を静かに確認した。