とある堕天使のモノガタリⅣ ~TORAH~




目の前の銀髪は背もたれに両腕を置き、『なるほど。』と呟く。



『…で俺に聞きに来たってか?』



『まぁね。…あの時俺は影が実体化したのを確かに見た。その後、スクリーンが炎上した…あれは君の仕業か?』



『…あの映画で観客が暗示にかけられてるって言うんでね。』



『暗示…一体なんの為に?』



『俺を誘き寄せるエサだろうな。』



さらっとそう言って肩を揺らしてクスクスと笑う銀髪に、ベッカーは躊躇いがちに口を挟んだ。



『ほ、本当に“紅い瞳”は君なのかい?』



すると銀髪の彼は立ち上がりベッカーを振り向いた。



軽く長い前髪を掻き上げた。



『…これでどうだ?』



それは綺麗な瞳だった。



まるでそれそのものが光を放つように…。



左目は翡翠色だが右目は燃えるような深紅。



…この青年は以前からこんな瞳だっただろうか?



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