とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
『じゃあ、その影はいったいなんだったんですか?』
『なにって…』
ベッカーは言葉を詰まらせる二人を交互に見て首を傾げた。
『…なんだったんだろうな~』
『う、うん。検討つかないなぁ~』
『…もしかして私を馬鹿にしてんですか!?一応これでも精神科医なんですよ。あなた達の嘘くらい見破れます!』
不愉快を前面に出してそう言うベッカーにダンが銀髪の彼に視線を投げ、助けを求める。
彼は『知らねぇ~』と薄情な捨て台詞を吐き、フードを被り直した。
『おい、クロウ!裏切る気か!?』
『人聞き悪い!裏切るも何も、ベラベラ喋ったのはお前だろ!?』
『だからそれは不可抗力だって言ってんだろ!?』
『うるせぇ、ジジイ!』
『ジ、ジジイ!?俺はまだ30代だ!だいたい前から思ってたんだが、口が悪すぎるぞ!』
微妙に論点がズレ始め、ヒートアップする二人をベッカーが慌てて止めに入る。