とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
ベッカーは助けを求めるようにダンを見た。
彼はそんなベッカーに申し訳なさそうな表情をしたが、すぐに視線を反らした。
…か、神さま…!
思わずそう祈るベッカーに右京は微かに口角を上げた。
『神が人間を助けると思いますか、ドクター?』
『!?…』
思考を読んだような右京の言葉にベッカーは目を見開いた。
『神は人間を助ける余裕なんて無いんですよ。』
『えっ…?』
『…まぁ、昔はそんな事もあったかもしれない。けど、今となっては単に利用できる便利な駒にしか考えてないでしょう。』
…一体何を言ってるんだ、この男は…
『“一体何を言ってるんだ、この男は…”って?』
『なっ…!?な、なぜ!?』
驚くベッカーに彼は少し身を乗り出すように顔を近付け、低い声で囁いた。
『俺が神を知ってるからさ。』