とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
そしてグラスのワインを飲み干し、それをクドラクを渡すと彼は背もたれに深く寄り掛かる。
傲慢に見えるその動作はまるで悪魔みたいだと思った。
だが、何故かこの男だと何処か魅力的に見えつい見とれてしまう。
ふと、ベッカーは死んだ友人の言葉を思い出した。
『“神に仕えし悪魔”…』
ボソッと呟くベッカーに右京が一瞬眉を寄せた。
『…今、なんて言った?』
『あっ…!いや、なんでもない…!』
『ドクター…何処でそれを?』
そう聞いたのは右京ではなくダンだった。
『ゆ、友人の言葉だよ。』
『その友人は、神に仕えし悪魔が何だって言ったんです?』
『何っていうか…“神に仕えし悪魔からは逃げられない”って…。』
右京とダンが目で会話をするかのように一瞬無言になり、ベッカーはただ動揺するばかりだった。