とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
その場の重い空気を『でさぁ~』と言う虎太郎の場違いな声が打ち破る。
『どうすんの?消すの?消さないの?』
『…気が変わった。』
右京がそう答えるとベッカーはホッと胸を撫で下ろした。
『良かった…殺されなくて…』
『はぁ!?殺す!?』
三人は顔を見合わせ、同時にゲラゲラと笑い出した。
『殺すつもりは最初からないから!』
『えっ…?だって“消す”って…』
『消すのはこっち!』
虎太郎はクスクスと笑いながら自分の頭を指差す。
まだ理解出来ていなそうな彼にダンが『記憶ですよ』と付け加えた。
『ヒューガは記憶を操作出来るんですよ。』
『記憶を!?…また私をからかってるんですか?』
『からかってないさ。虎太郎の能力は本物ですよ。』
…そんな…!
そんな非科学的な事を当たり前のように言う彼等に、ベッカーが更に混乱しているのが判る。