とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
その小競り合いは留まる事なく、「忍は俺のだ!」「いや、俺のだ!」とまるで子供の喧嘩だった。
「…で、右京が飛び出したわけ?」
「まさか!!“出てけ!”ってお父さんに殴られたのよ。」
「ええええっ!?…そんな事、一言も言ってなかった。」
「“駆け落ちだぁ!”って捨て台詞吐いてたけど…そういえば、普通に帰って来たわね…」
母は「右京らしい」とゲラゲラ笑った。
たぶん普通のカップルなら“私の為に殴られて…”と胸を痛めるシーンだろう。
だがこの“黒崎家”では違う。
殴った、殴られたなんて日常茶飯事だし、それが堪える奴らではない。
話を聞いて忍が思ったのは…
“うちの男連中は何故こんなに馬鹿ばっかなのか…?”
という事だった。