とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
…つまり人間を巻き込むのは自分への脅しって事か…。
『ウリエル。お前は愛する者の死に堪えられるか?』
冷たくそう言い放つマスティマに右京が目を見開く。
『な…何だって?』
『神はお前の力を手に入れる為ならそれが一番確実だとおっしゃっていた。』
『貴様…俺を脅すのか?』
『我の意思ではない。神の御意志だ…!』
知らず知らずのうちに握り締めた拳に血が滲む。
沸々と身体の内側から沸き上がる怒り…。
『右京…!落ち着け!』
虎太郎の声にハッと我にかえる。
気がつけば足元から風が吹き荒れていた。
右京は一旦目を閉じて怒りを圧し殺し、静かに深紅の瞳を開いた。
『仲間にはこれ以上手を出すな。』
『…仲間?人間を仲間だと?ふっ…面白い事を言う。…あの女の身に危険が迫ってもそう言えるか?』
刹那、右京の瞳が鋭さを増し、マスティマに向かって一筋の風が刃となって頬を掠めた。