とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
『…というか、俺達は…と言った方が正しいか?』
確かに彼の紅い瞳は普通ではないが…。
…どうみても人間にしか見えないじゃないか。
ベッカーが自分を観察する様子に右京は小さく苦笑した。
『俺は昔“ウリエル”って名で呼ばれてた。』
…ウリエル…?確か熾天使の名前だ。
そして催眠療法でダンが口にした言葉を思い出す。
“純白の羽根が…”
ダンはあの時そう言っていた。
『じゃ、じゃあ君は天使だと!?』
『いや俺は違う。…コイツはそうだけど。』
虎太郎を指差しサラッとそう言うと、ベッカーは言葉を詰まらせたまま二人を交互に見た。
虎太郎は『そういう事~』と屈託のない笑顔で答えた。
『ちなみに私も人間じゃありませんから。』
予想外の方からそんな声が聞こえて振り返ると、屋敷の主がニヤリッと口の端を吊り上げた。