とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
結局、右京は「イギリス支店に就職するけど、忍も連れてく!」と条件を付けたらしい。
「それって“結婚する”って事でしょ?」
「さぁ…でも…確かに言われた…」
…思い出したくないくらい恥ずかしいプロポーズだったけど…。
嬉しいより恥ずかしい気持ちが勝り、素直に喜べないのだ。
しかも母の話を聞いた限りでは、多分まだ父と和解してないのではないだろうか。
母は「心配ない」と言っていたけど、やはりちゃんと祝福されたいと思う。
そんな忍の心中を見透かしたように母は優しい笑みを浮かべた。
「結婚を急ぐ必要はないわ。ちゃんと二人で話し合いなさい。」
「…うん…。」
忍はちょっと恥ずかしそうに「ありがとう」と言うと階段を上がり、自分の部屋の前で立ち止まった。