とある堕天使のモノガタリⅣ ~TORAH~



右京はパンを持つ手を止め、ジッと忍を見詰めた。



「…なに?」と可愛らしくちょっと首を傾げた忍に右京はふと微笑む。



「今日もカワイイよ。」



「えっ!?な、なによ突然!」



「最近面と向かって言ってないと思ってさ。」



実際、右京の仕事が急激に忙しくなり始め、まともに会話が出来るのは朝だけになっていた。



一緒に住んでいながらすれ違う事も多く、忍が寂しい思いをしてるんじゃないかというのも右京としては気になっているのだ。



「ふふふ…なんだかその言い方、長年連れ添った老夫婦みたいじゃない!」



「老夫婦になる前に子供作らないとな!」



「その前にまだ結婚もしてないけどね~」



…そうだった…。



近所でも職場でも忍の事を皆『奥さん』と呼ぶので、右京もすっかりそのつもりになっていた事に気付いた。


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