とある堕天使のモノガタリⅣ ~TORAH~



今までどうして来たのかと聞くと、彼は『どうしてたっけかなぁ』と空を仰ぐ。



『子供の頃は地元の祖父の友達がやってる診療所で診てもらってたけど…』



適当に誤魔化して貰ってたのかもしれない。



怪我らしい怪我もした事無かったし、病気なんてしたことがない。



『まぁ、病院なんてほとんど縁がなかったしなぁ~。』



『……あぁ…そう…。』



ある意味この男には感服である。



ベッカーはもう何も聞く気になれず、黙ってカルテにペンを走らせた。



『じゃあ、上半身脱いで。』



『は~い』と素直に服を脱いだ彼を見て、またもや眉を寄せる。



『ど、どうしたらこんな傷になるんだ!?』



『ん?あぁ、これ?これは…』



『いや、いい!言わなくていい!』



『…じゃあ、聞くなよ…』


聞いておきながら『言うな』と言われ、右京は不貞腐れ気味に口を尖らせブツブツと呟いた。


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