とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
…どうせ聞いても私には理解出来ない…。
彼の…いや、彼らの話はいつだってベッカーの予想を遥かに超えたスケールで展開される。
その為、思考が追い付かず毎度悩まされるのが目に見えているのだ。
聴診器を彼の胸に当て、心音を聴く。
人間と変わらないリズムで脈を打っている事にホッとした。
…が、ベッカーは背中を見て一瞬息を飲んだ。
『この傷は…』
『ひでぇだろ?もがれたんだよ…。』
…“もがれた”…?
『何を?』と言い掛けてその言葉を飲み込む。
なんとなく聞いてはいけない気がした。
自分は信じきれていないのかもしれない…彼らの事が…。
だが、こう色々と目の当たりにすると、認めざる負えないのも事実。
一通り診察を終えると、彼は右京に『いいよ』と声を掛けた。