とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
その後ろ姿をぽぉー…と見送って、若い看護婦は呟いた。
『…素敵…』
『えっ…?』
『彼ですよ!…彼女居るのかしら?』
『あぁ、フィアンセが居るらしいよ。』
ガッカリしたようにため息を着くと、看護婦は血液サンプルを手に診察室を出て行った。
ベッカーは小さく苦笑し、目頭を揉み解す。
…異様に疲れた…。
たかが健康診断だけでこんなに疲労するとは思っていなかった。
ぼんやりと窓の外を眺め、暫しの休息を取る。
無意識のうちに彼について考えている自分に気付き、ベッカーは軽く頭を振った。
『ドクター?午後の患者さんのカルテなんですけど…』
まだまだ自分の仕事は山積みだった事を思い出し、ベッカーは右京のカルテをゆっくりと閉じた。