とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
『ときにクロウ。ロックは好きか?』
『ロック?…嫌いじゃないけど…』
『そうか。丁度ここにチケットが2枚あるんだが…シノブと行ったらどうだ?』
『………本題に入れよ…。』
まずこの男が単に好意でチケットだけくれるなんてあり得ないのだ。
案の定アランは『実は』と事の経緯を話し出した。
『前に君が言ってたミュージシャンなんだが…』
そう言われ、右京はピクリと眉を動かす。
この前ベッカーの病院で言われた看護婦の一言が気になっていたのだ。
─“同じようなタトゥーをしている”─と…。
『彼は“vale”というグループのギタリストだった。』
…“vale(ヴェイル)”…
確か、最近デビューした大型新人バンドだ。
『俺が行くよりクロウが直接行って見た方が早いだろ?』
右京はアランに『後でチケットを取りに行く』と言って電話を切った。