とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
普段なら「俺の前で他の男の名前を連呼すんな!」と愚痴っていただろう。
だが今日は「忍の好きなように」と言ってしまった手前、愚痴すら溢せない。
いつも色々と我慢してる彼女を想うと、機嫌を損ねるような事は言いたく無かった。
そもそも、忍のストレス解消が目的なのだから…。
「…右京だってきっと彼の歌、聴いたことあるって!」
「彼!?」
「うん…?なに?」
「…なんでもない…。」
既に彼女の中では“彼等”ではなく“彼”になっている。
たぶんライヴに行ってもその“テリー”って男以外、目に入らないだろう。
そう思うと「行くの止めよう」という言葉が喉まで込み上げて来るのだった。