とある堕天使のモノガタリⅣ ~TORAH~


買い物の途中でレコード店に引っ張られ、無理矢理valeの新曲を試聴させられる。



「知ってるでしょ?ほら、CMで使われてる…」



「あぁ、あれか。」



「ね?いい声でしょ?」



「…歌手だし、こんなもんじゃない?」



意地でも“上手い”なんて言いたく無かった。



正直ムカツクくらいいい声で、歌唱力もそこらへんの奴らより全然上手かった。



「生で聴いたらまた違うんだろうなぁ~」



「………」



ずっと耐えていた右京だったがそろそろ限界だ。



黙ってヘッドホンを元の位置に戻すと自分の好きなソウルミュージックの棚へと移動する。



「…なんか怒ってる?」



「別に?」



イライラを悟られないように何食わぬ顔で答えたが、忍は見透かしたようにクスクスと笑っていた。




< 393 / 476 >

この作品をシェア

pagetop