とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
買い物の途中でレコード店に引っ張られ、無理矢理valeの新曲を試聴させられる。
「知ってるでしょ?ほら、CMで使われてる…」
「あぁ、あれか。」
「ね?いい声でしょ?」
「…歌手だし、こんなもんじゃない?」
意地でも“上手い”なんて言いたく無かった。
正直ムカツクくらいいい声で、歌唱力もそこらへんの奴らより全然上手かった。
「生で聴いたらまた違うんだろうなぁ~」
「………」
ずっと耐えていた右京だったがそろそろ限界だ。
黙ってヘッドホンを元の位置に戻すと自分の好きなソウルミュージックの棚へと移動する。
「…なんか怒ってる?」
「別に?」
イライラを悟られないように何食わぬ顔で答えたが、忍は見透かしたようにクスクスと笑っていた。