とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
Sorry…と言われ、顔を上げると何処かで見た事ある顔に忍は釘付けになる。
『あ…も、もしかして“vale”の…!?』
そこまで言ったところで彼は長く綺麗な指先を忍の唇に押し当て『シィー…』と囁いた。
忍は微かに目眩を感じながら『あ、あの!』と思い切って声を掛けた。
『ライヴ最高でした!』
緊張して思わず声が上擦ってしまったのが恥ずかしい。
彼はそれを笑う事なく『ありがとう』とニッコリ微笑んだ。
…ヤバい!テリーもだけど、この人も格好いい!
が、名前が出て来ない自分に嫌悪する。
彼はそんな忍にスッ…と手を伸ばして彼女の黒髪をに触れた。
『…髪が…』
どうやらぶつかった拍子に髪が乱れたらしい。
自分の髪を直す自然な動作に反応出来ず、忍は彼を見上げた。