とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
吸い込まれそうな彼の瞳から視線が逸らせない。
─ブォォォォン…!
バイクのエンジン音でハッと我に返る。
忍は自分を包む様に巻き上げる風に振り返ると、ライトの光が自分達を照らす。
「…右京?」
目を細めた忍はそこに居るだろう彼を見た。
フルフェイスを脱ぎ、ゆっくりとこちらに近づいて来る右京の表情は逆光でよく判らない。
グイッと腕を引かれて彼の後ろへと引っ張られ、転びそうになりなる。
驚いて右京を見上げたが忍の視界には彼の広い背中しか見えなかった。
『…俺の女に触るな。』
怒りを含んだような低い声に忍はビクッと肩を震わせる。
『怖いな…悪かったよ。』
『う…右京!?』
慌てて彼のジャケットの裾を引っ張る忍を無視して右京は彼を正面から睨んだ。