とある堕天使のモノガタリⅣ ~TORAH~



右京の操るドゥカティが街中を疾走する。



そのドライビングに少し荒さが目立ち、彼が苛立っているのが判る。



忍は振り落とされないように彼の背のしがみついた。



当の右京はずっと無言で怒っているように思えた。



やっと停車した時、忍は恐る恐る彼を伺う。



フルフェイスを脱ぎ、軽く銀髪を振ると、ちょっとため息を着いてから右京は忍を振り返る。



「…疲れた?」



忍は「ううん」と首を振ってからギュッと彼の背中に抱き付いた。



「降りないの?」



「ちょっとだけこのまま…」



そう言う忍をクスッと彼が笑う。



「…怒ってない?」



「怒ってないよ。」



「…あのね?」



「ん?」



「どんな格好いい人が現れても、私が好きなのは右京だから…。」



「ハハハ…当たり前!」



彼は忍の腕を自分からほどくと、見惚れる程綺麗な顔で忍を振り返った。




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