とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
そして愛車から降りるとタンクに手を着いて忍を覗き込んだ。
「言い訳に聞こえるんだけど、何か後ろめたい事でもあるの?」
「な、ないよ!」
「…アイツに触られた?」
アダムの事を言っているのだと気付き、忍はブンブンと首を振る。
「アダムは…髪を直してくれただけだよ…。」
「………」
右京は黙ったままそっと忍の髪に触れた。
それが何かを堪えていると忍には判ってしまう。
…妬いてるの…?
自分を射るような瞳が紅く色を増した気がした。
髪を撫でる右京の手が後頭部まで来ると、突然ガッ!と鷲掴みにされ忍は一瞬呻き声を上げた。
唇が触れそうな程至近距離で右京は囁く。
「…俺が何を考えてるか判る?」
驚いて目を見開いた忍はただ右京を見詰めていた。