とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
◇
忍が仕事へと行ってしまうと右京はその寂しさを稽古で紛らす。
イギリスでは休日に多少身体を動かしてはいたが、稽古らしい稽古はしていなかった。
だから帰国してからは師範との稽古が意外と楽しい。
師範は相変わらず強かったが、日本に居た頃のようにコテンパにされる事は無かった。
自分が腕を上げたのか、師範が老いたせいか…
だが、右京は師範と同等に渡り合えたのが素直に嬉しかった。
それは右京だけじゃないらしく、師範も満足そうに思えた。
午前中はそんな調子で一頻り汗をかき、午後は忍の母である叔母の買い物に付き合う。
叔母は買い物中、「私の事はお母さんって呼んで!」と繰り返していた。
右京は突然の叔母の言葉に戸惑っていたが、余りにしつこいので帰る頃には諦めて「母さん」と呼ぶ事にした。
…“母さん”なんて誰にも言った事ないかも…
そう考えると嬉しいような、恥ずかしような…なんとも言えない気持ちでちょっと胸が熱くなったのだった。
忍が仕事へと行ってしまうと右京はその寂しさを稽古で紛らす。
イギリスでは休日に多少身体を動かしてはいたが、稽古らしい稽古はしていなかった。
だから帰国してからは師範との稽古が意外と楽しい。
師範は相変わらず強かったが、日本に居た頃のようにコテンパにされる事は無かった。
自分が腕を上げたのか、師範が老いたせいか…
だが、右京は師範と同等に渡り合えたのが素直に嬉しかった。
それは右京だけじゃないらしく、師範も満足そうに思えた。
午前中はそんな調子で一頻り汗をかき、午後は忍の母である叔母の買い物に付き合う。
叔母は買い物中、「私の事はお母さんって呼んで!」と繰り返していた。
右京は突然の叔母の言葉に戸惑っていたが、余りにしつこいので帰る頃には諦めて「母さん」と呼ぶ事にした。
…“母さん”なんて誰にも言った事ないかも…
そう考えると嬉しいような、恥ずかしような…なんとも言えない気持ちでちょっと胸が熱くなったのだった。