とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
『そうじゃなくて、腕のタトゥー…右京のと似てる…。』
『えっ…?』
リサは食い入るようにそれを見て『まさか…』と呟いた。
急に無言になってしまったリサに忍は首を傾げ、彼女の顔を覗き込んだ。
『リサ?…どしたの?』
『シノブ…あのね…?』
そう言い掛けた時、後ろから来た集団に押されて二人は会場へと雪崩れ込む。
はぐれないようにするのが精一杯で、興奮した場内では会話を出来る様な状況ではなかった。
まるで靄がかかったような、言葉にならない不安が胸を占める。
忍はそんなリサには気付かず、ステージを期待に満ちた瞳で見詰めていた。
…ヒューガ…どうしよう…!
あの腕のそれは間違いなく“契約証”だった。
…って事はアダムっていったい…。
楽しみにしていたライヴが今は不安で仕方ない。
リサは“どうか何事もなく無事に済みますように”とただ祈る事しか出来なかった。