とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
丁度二曲目が終わり、テリーのMCが入る。
“皆に会いたかったよ”とか“愛してるよ”とか…
右京からしたらこの上なくウザいだけだった。
鉄筋の上であぐらをかき、その足に肘を着いて無意識に半眼になる。
ふとアダムを見ると天井を仰ぐ動作をして…。
…っ!?
間違いなくこちらを見て…ニヤリッと笑った。
『…チッ!気付かれた…!』
右京の囁きに緊張が走る。
『ヒューガ…辺りの様子は!?』
『…大丈夫。何も感じられない。』
だが、アダムは何食わぬ顔で次の曲を演奏し始めた。
…何故仕掛けて来ない…?
彼の思考が全く読めなかった。
そこから数曲何も起こる気配はなく、ライヴ半ばでメンバー紹介と共に、個々にパフォーマンスを始めた。