とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
そしてライヴは後半へと突入する。
『…妙だな…』
確実に右京の存在に気付いて居るのに、アダムはまるで“やれるもんならやってみろ”とでも言っているようだ。
時間だけが過ぎ、既にフロアにはアンコールが響き渡っている。
『…何か居る…!』
インカムから耳に響く虎太郎の台詞にドクン…と鼓動が高鳴る。
『逃がすなよ、ヒューガ!』
『判ってる…!』
感覚を研ぎ澄ますと碧眼で周囲を探る。
そして屋上から飛び降り、闇夜に紛れて気配を追う。
…近い…!
虎太郎は視線を感じて足を止めた。
…何処だ!?
そこに気配があるのに姿が見えない…。
姿は見えないが生々しい息遣いが聞こえて来る。
それは虎太郎の耳と鼻に執拗にまとわり着き、彼を焦らせた。