とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
足元を淀んだ空気が流れ、自分が奴のテリトリーに居るのだと理解した。
地の底から沸き上がるような低い唸り声…。
虎太郎はハッと地面に目を向けた。
…影かっ!?
そこに潜んで居た奴と目が合う…。
まずい…!と思った次の瞬間それに足を掴まれた。
『くっそ…!』
その場から身動きが取れない虎太郎はギリッと奥歯を噛みしめた。
─…おやおや…誰かと思ったらハニエル様じゃないですか…。
足元の影が虎太郎を嘲笑う。
そして淀んだその空気が膝から腿へと這い上がるのを感じた。
このままでは殺られるのは確実だ。
…冗談じゃないっ…!
虎太郎は風を纏うと純白の翼を広げ…
羽ばたきながら思いっきり影を蹴り上げた。