とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
アダムは近くにあったベンチに腰を下ろし、『単純な事だよ』と口を開く。
『君がこっち側に付いてくれたら、人間には手を出さない。』
『…結局お前らも俺を脅すのか?』
『ゼウスみたいに直接君の大切な人をどうこうする様な事はしない。』
…何故だ?
やろうと思えば人間を大量に排除できるのに、彼らはしなかった。
…マルバスはルシファーの配下だったな…。
ルシファーがタイタン側に付いたのも不思議だった。
その行動の裏には絶対なにかあるはず。
右京は一瞬考え、ある結論に達した。
『…本当にその言葉信じていいのか?』
インカムからは『右京!?』と焦った様な虎太郎の声が聞こえた。
『俺の主は嘘は付かない。君だって知っているだろう?』
アダムは少し首を傾げて右京を見上げる。
『いいだろう。…もしそれを破ったら…貴様らを血祭りにあげてやる。』
『じゃあ、とりあえず“休戦”って事で・・・』
そう言って彼は手を差し出したが、右京がその手を握り返す事はなかった。