とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
神社までは距離にして2km程だったが、登り坂が多く、意外と遠く感じた。
そして、最近運動不足だった忍は、神社の手前にある長い階段を見て思わず愚痴を溢した。
「…ちょっと休もう?」
「えっ?もう?…神社目の前じゃん…」
「だって…この階段上るんでしょ…?」
そう言うと右京は笑いながら「だせぇ」と呟いた。
「仮にも道場で育ったヤツとは思えない言葉だな…」
「右京と違って馬鹿みたいに体力ないから~!」
“馬鹿”という言葉に右京の眉がピクリと動いた。
「…休憩却下。」
やだやだと駄々をこねる忍を右京は無言で担ぎ上げた。
「ちょっ…!?こ、怖い!判ったから!歩きます!」
「未来の旦那に向かって“馬鹿”発言した罰!」
そう言って右京は忍を肩に担いで石段を猛ダッシュで駆け上がる。
静かだった辺りに忍の悲鳴がしばらく木霊していたのは言うまでもないだろう。