とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
右京はその木の根元に立ち、目一杯腕を伸ばしてみた。
「ほら…指先がやっと届く位だし。この状態であの深さの傷は厳しい。」
「でも、もしその手に鎌を持ってたら?」
「あ~…それならなんとか…」
だがややあって右京は「いや、違うな」と首を振った。
「傷の向きがそれだと符合しない。…ほら、あれは真横から刃物が入ってるよ。」
言われて注意深く見てみると、確かに真横に真っ直ぐ一文字に斬り付けた傷だった。
「人間業じゃない…か…」
となると、やはり一番しっくりくる答えは…
「“鎌鼬”…?」
「実際に居るんだとすればだけど。」
「でも他に思い付かないよ。」
溜め息混じりの忍に右京は「例えばさ」と、ある仮定を口にした。
「天狗の森の天狗は俺みたいな堕天使だとしたら?」
忍は右京の言いたい事を理解して目を見開いた。