とある堕天使のモノガタリⅣ ~TORAH~


右京はその木の根元に立ち、目一杯腕を伸ばしてみた。



「ほら…指先がやっと届く位だし。この状態であの深さの傷は厳しい。」



「でも、もしその手に鎌を持ってたら?」



「あ~…それならなんとか…」



だがややあって右京は「いや、違うな」と首を振った。



「傷の向きがそれだと符合しない。…ほら、あれは真横から刃物が入ってるよ。」



言われて注意深く見てみると、確かに真横に真っ直ぐ一文字に斬り付けた傷だった。




「人間業じゃない…か…」



となると、やはり一番しっくりくる答えは…



「“鎌鼬”…?」



「実際に居るんだとすればだけど。」



「でも他に思い付かないよ。」



溜め息混じりの忍に右京は「例えばさ」と、ある仮定を口にした。



「天狗の森の天狗は俺みたいな堕天使だとしたら?」



忍は右京の言いたい事を理解して目を見開いた。



< 67 / 476 >

この作品をシェア

pagetop