とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
右京はなかなか動こうとしない忍を引っ張って入口まで来ると、木製の朽ちかけた門を押し開けた。
ギイィィィ…と軋んだ音を響かせて開いた扉に忍がゴクリと唾を飲んだ。
人影は見当たらないが、内側は思ったより荒れ果てた様子もない。
「意外と綺麗じゃないか。」
「…そ、そうね…」
ズンズン進んでいく右京に忍はしがみついて、離れないように歩く。
なんとなく空気がひんやりしている気がして、忍は身震いをした。
「…何かご用ですか?」
真後ろから聞こえた声に忍が飛び上がる。
「すみません、勝手に入ってしまって…。」
そこに居たのは穏やかな雰囲気の住職だった。
「この辺りを取材に来たんですが、宿の方にこちらの寺院を勧められまして…。」
びびって自分の影隠れてしまった忍の代わりに右京がそう言うと、住職は「なるほど」とにっこり笑った。