とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
「何の声を聞いたんです?」
「はっきりとは…凄い嵐でしたから…」
だが、住職はその嵐の吹き荒れる音の間に微かな声を聞いたと言った。
「良くは聞き取れ無かったんですが“善とは…”とか“悪とは…”と…。」
…なんだって?
「私は御告げだと思ってます。“犬神様”の…。」
「“犬神様”って…?」
「おや、ご存知無かったのですか?…あの神社は“犬神様”を奉った神社なんですよ。」
─“犬神”?
首を傾げる右京達に住職は犬神について教えてくれた。
名前は犬だが、実際は狐に似た容姿をし犬のような声で鳴くんだとか…。
昔怪我をした人々の傷がなかなか治らなかった事があり、それは犬神を丁重に奉って無かった為と村人達は考えた。
それで神社を建て、祈りをささげたのだ。