とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
住職が言うには“鎌鼬”は犬神の使者らしい。
「面白い話ですが、ちょっと信じがたいですね…。」
「まぁ…そう言われてしまうと何も言い返せませんが…」
住職は苦笑しながらそう呟いた。
右京と忍が礼を言って寺院を出ると、陽はもう西に傾きかけていた。
「早くしないと捕まりますよ~」
「捕まる?…鎌鼬ですか?」
「いえ。さ迷える自縛霊にですよ。」
「じ、自縛霊…!?」
青ざめる忍を見て住職はクスクスと笑った。
「この寺院はそれらの霊魂を宥める為にあるのですから。」
…なるほど…
だが、まだ右京はちょっと符に落ちなかった。
…“鎌鼬”…声…犬神…そして自縛霊…。
足早に帰り道を歩く忍を余所に、右京は考えながら歩いていた為ペースが遅い。
そんな右京を忍はグイグイと引っ張り、行きに愚痴を溢していたとは思えないスピードで宿まで帰ったのだった。