とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
その様子に右京はクスッと小さく笑うと「おいで」と両手を広げた。
素直に擦り寄ってくる忍のこめかみに口付けて、ギュッと彼女を包み込んだ。
そして、自縛霊…即ち怨霊の話を続ける。
「この辺りは住職の話だと自縛霊が多い。…それが何らかの理由で一気に暴れだした…。」
「な、なんでそう思うの?」
「住職が“声”を聞いたって言ってたろ?その声の主が自縛霊…つまり怨霊を操ってるんだよ。」
「やだやだ!やめてよ~!」
しがみついて来る忍を引き剥がすと、右京は「のぼせる」と言って立ち上がった。
「やだ~!置いてかないでぇ!」
「忍、さっき身震いしてたじゃん。いいよ、まだ入ってて。」
「俺は上がるけど」と付け加えると、右京はさっさと部屋に戻ってしまった。
あんな話の後でゆっくりお湯に浸かれるはずもなく、忍も慌てて右京の後を追うのだった。