とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
右京には一秒たりとも時間を無駄に出来ない理由がある。
それは卒業間近で論文に追われているのと、一時帰国を控えているからに他ならない。
郵便物の束を手に取り自分の部屋の扉の施錠を外した。
ダイレクトメールの中に有り得ない物を発見し、訝しげに眺めてから封を開けた。
『マスター?お戻りでしたか…』
『ああ、バージ…ただいま。』
キッチンから出て来たバジリスクにそう言ってハグをすると、また手元に視線を戻す。
『それは?』と一緒になって右京の手元を背伸びして覗き込む彼女に苦笑した。
『“勧誘”だよ。』
何の事を言っているのか理解出来ず、彼女はちょっと首を傾げた。
右京はそんなバジリスクの頭をポンと撫でてその手紙を引き出しに仕舞った。