とある堕天使のモノガタリⅣ
~TORAH~
「おや、黒崎様。」
そう声をかけられ二人は同時に振り返った。
「ご夫婦揃ってお買い物ですか?仲が良くて羨ましい…。」
そこに居たのは宿の支配人だった。
「昼間はどうも。行って来ましたよ、神社。」
「お寺も行かれましたか?住職の話、お聞きになりました?」
「はい。興味深い話が聞けました。」
忍がそう言うと支配人は「そうでしょう!?」と満足げに頷いた。
「是非記事になったら教えて下さい!」
支配人はそれだけ言うと、他の従業員に呼ばれて行ってしまった。
「あの人、オカルト好きみたいね~…」
「ん。多分、俺らもそうだと思ってんだろうな。」
右京はともかく、忍に関してはオカルトネタはどちらかというと苦手だ。
特に心霊ネタに関しては論外である。
「ところでさ…俺らって夫婦に見えるんだな?」
「名字が同じだから勘違いしたのね、きっと。」
「ちょっと照れる…。今日の忍は甘ったれだし…。」
真っ赤になって反論しようとした忍に右京は軽くキスをした。
「早く部屋に戻ろう…“奥さん”…」
右京の少し艶っぽい声に忍は何も言い返せなかった。