イケメン大奥
6.リアルな恋愛事情
帰る時間が近づいてきたのか、
レイはあたしたちが食べ終わったのを見計らって、食器を下げ始めた。
「あと一杯、紅茶を飲んでもいい?」
あたしの要望はすぐに受け入れられて、御小姓がお茶を入れてくる。出がらしなんかじゃなくて、新しく入れた茶葉の濃い香りが辺りに漂う。
レイ。
そんなにじっと見つめないで。あなたの瞳が語っていること、分かっているから。
「このお茶を飲んだら、行くわ」
ゆっくりと大事に最後の一滴まで味わうように。ティーカップを両手で包むようにして、あたしは出された紅茶を楽しむ。この優雅な時間を忘れたくない。たとえ、帰った場所にはこんな贅沢な時間がないにしても。
「行きましょう」
飲み終わってカップを置いたとき、あたしは立ち上がってレイを催促した。気遣うようにレイがあたしの傍につく。
「どこに……行けばいいの?」
控えの間かしら?
あたしにレイが手を差し出す。
「こちらへどうぞ。ご案内いたします」
呉服の間を出ると、相変わらず多くの男性たちがずらりと並び、低い姿勢で伏していた。
「ありがとう……」
歩きながら両脇に声をかける。「ごきげんよう」という方々からの声に目頭が熱くなる。
レイとあたしに続いて、キヨやラン、レンが続いて歩いていく。
でも、ハルは、
「わたくしはこちらで失礼いたします」
と深々と礼をして、足早に去って行った。