イケメン大奥
現実のリアルの恋愛は全く希望がないように思えていたけれど。
希望の光が見えてきたような気がした。
あたしは希望を胸に、ロッカーから激辛のカップラーメンを取り出す。まだ腹ペコではないけれど、午後の勤務に向けて気合を入れたかった。
そのとき、控室のドアが開いた気配はなかったのに、
人の声を背後で聞いた。
「ご機嫌ですね」
振り返る。スーツに身を包んだ中肉中背の男性の姿。ここは女性限定の控室なのに! 悲鳴を上げそうになり、口を塞がれる。
「わたしですよ」
なんだ、ハル。驚いてしまった。心臓がばくばくいっている。しゃがみこんで、スカートの中が丸見えなのに気づいて、慌てて立ち上がる。
「大奥のレイ様の許可が下りました」
「え?」
こんなに早く?
ハルはスーツの袖を窮屈そうに振りながら、あたしの意向を訊く。
「どうされますか、すぐに出発しますか」
「今、出発したら、戻ってくるとき、この場所に帰ることになるの?」
「ええ。そうですね」
それは困る。出来れば、自分の部屋で大奥へ行きたい。控室に戻ってくるなんて、なんか嫌だ。
「しかし、最短で上様になられるのであれば、急がないと」
ハルが急かす。急かされて、あたしは渋々、頷いてしまった。
それがどんな結果を引き起こすことになるのか、全く分からないままに……。