イケメン大奥
7.働きバチたち
大奥に着いて、目が覚めたとき、最初に目にしたのは簡素な木の椅子が並んでいる様子だった。
部屋の壁際にずらりと並んだ木の椅子に、少年たち、若い青年たちが座って思い思いに喋っている。その声のざわめきに耳が痛くなりそうだ。
「よう、新入りか、見ない顔だな」
壁際の椅子で喋っていた幾人かが、部屋の中央に倒れていたあたしに近づいてくる。木の床が硬くて腰が痛い。身体を起こすと、あたしは白いシャツに黒いズボン、まるでウェイターのような姿をしていることに気づく。
「お前、女みたいな顔だな」
近寄ってきたのはオランウータンのようなごっつい顔をした、体格のよい青年だ。あたしの顎をぐっと上に引き上げて、俺を覚えておきな、と言って部屋の奥に戻った。
ここは、今まで見たどの大奥の部屋とも違う。
きらびやかな上様に与えられた部屋の数々でもなく、お叱りを受けた部屋でもない。ただ、人口密度が物凄い。そう、あの上様になるための挨拶式のような、人の多さ。
異なっているのは、その服装だ。皆、揃いもそろって黒服、執事かウェイターかという服装。そして、
あたしもその一人だったりする……。
もしかして、これが「ゴサイ」というものなのだろうか。
でも、ゴザイはこんなに多いのだろうか???
はてなマークが頭の中にどんどん増殖されていく。分からない事だらけだ。でも、おそらく身分の高い者ではないのだろう。
『そのとおりですよ、あやな様』
頭の中に響いた声。この落ち着いた低い声は、
ハルだ。