イケメン大奥
『ゴサイは上様にお目見え出来ない身分でして。下働きの者が集うこの詰所の管理をお願いいたします』
何をすればいいの?
ハルは何処にいるの? そうしてレイは?
「私どもは、上様に御仕えせねばなりませぬ。申し訳ありませんが、上様をお見送りした後、レイ様はお会い下さります」
そうだ、あたしは、今、上様ではない。
その立場を望み、大奥へ来たいと願ったのは、誰でもないこのあたしなんだ。
『私も、表との交渉事、買い物、雑事、そうして奥の細々な事をしておりますので、当分は、その詰所の者に従いお過ごしください』
今の上様が現実の世界に帰られるまで、
あたしは詰所と言われるこの場所で、
この大勢の者たちと過ごさなければならないらしい……。
ハルの声が消えて、ゆっくりと立ち上がる。多くの好奇心のこもった視線を受けながら、部屋の隅の空いている椅子に座る。
「どけよ、新入り」
座った途端、少年から命令される。
「お前、女みたいだな」
女ですもん……。
『ああ、言い忘れておりましたが、しばらく男として振舞っていただきますよう、とのレイ様の指示です』
頭の中に響いたハルの追加の言葉に、あたしは絶句した。
女でも来られる方法だから来たのに……、「ゴサイ」は女性でもなれるんじゃなかったの???
話が違う。
呆然としてしまう。