イケメン大奥
どうも群がった少年たち、青年たちの中で、経験をもつ先輩が椅子に座ることが出来るらしい。
仕方がないので、あたしは床に体育すわり。
仲の良い者は楽しそうに話し合って、仕事に向かっている。ここは休憩室なんだね、おそらく。でも、あたしは何をしたらいいんだろう……?
ぼんやりと体育すわりをしているとオランウータン顔の青年があたしの前に立って見下ろしていた。
その手にはモップとバケツ。
「新入り、この詰所をとりあえず掃除しとけ」
「はい」
答えた声が高かったせいか、「女みたいだな」と周りから囃し立てられる。まるで転校生が来たような、珍しい物を見る目つきに囲まれる。
「お前さ、やっぱり携帯のメール、クリックして来たの?」
大奥で働く者たちも、そうしてここに来たんだろうか。よく分からないので返事だけしておく。
「はい」
年若い少年たちは、オランウータン顔に持ち場へ行けと命じられて散っていく。
「あ、あの」
怯えているとオランウータン顔は、にかっと口を大きく開けて笑った。
「俺は政(マサ)覚えやすいだろ」
「う、は、はい」
とび職とか大工とかに多そうな名前。なんて想像していたら、また顎をつかまれた。殴られるのかと思いきや、
「うん、結月、お前可愛い顔しているよな」
と、にやけつつ言われた。
もしかして、そっちの男色の方なんだろうか???
あ、あたしにはそっちの趣味はありません……。
しかし何となく、この詰所のボスのようなマサ。
「不束者ですが、よろしくお願いいたします」
素直に頭を下げて、モップとバケツを手に早々に退散した。
男ばかりだから、女の子のような(女なんだけど)子は、その手の欲望のために狙われるのかしら。
あたしの今後が、かなり心配。でも少しの我慢だ!!