イケメン大奥
『ふかひれの姿煮、せっかくですから召し上がってください』
ようやく頭の中に響き渡るハルの声。
待っていたんだよ。
『ふかひれにはコラーゲンが豊富で、肌の張りが良くなるんです。化粧のりも良くなるそうですよ』
分かったから。あたしが上様になるため、動く時が来たんでしょ?
だからこうして呼びかけているのよね。
ふかひれに箸を進めるあたしの頭の声が指示を出す。
『この食事が終わり、後片付けが終わりましたら、皆、就寝いたします』
ふうん、そう……で?
『就寝のときに、詰所を出てまっすぐ歩いていくと階段が見えます』
うん、で?
『階段を2階上がりまして、目の前に見える部屋がレイ様のお部屋です』
レイの部屋に行くの? あたし。
なんだか急に鼓動が速くなってきた。就寝時間にレイの部屋に忍び込め、というの?
『レイ様には伝えてありますので、ノックして静かにお入りください』
え、ええええ?
上様になるのはいつのことなの?
『おそらく……レイ様の指示を仰いでいただきますが、就寝時間後になるかと思われます』
その間、レイとふたりきり。