イケメン大奥
「レイ」
ドアからあたしを引き入れたのはレイ。ブルーのガウンの腕に背中を押されて部屋に入る。
「その恰好は……懐かしいな」
レイは、可笑しそうに笑う。
「なに、似合ってない?」
「いや、懐かしいんですよ。わたくしも昔には着ていましたから」
あたしはレイが執事の黒服を着て控えているのを想像した。
うん、似合うかも。見てみたいかも。下々のお目見え以下だったレイ。
「やっとここまで来れた……」
見つからないように潜んできたから、その分、身体がこわばってガチガチだ。
「その恰好でずっといると疲れるでしょうから」
レイが手渡してくれたのは、男性用のローブ。
「生憎、わたくしのしか、ないのですが」
……いい香り……。フレッシュなレモンの香りが鼻をくすぐる。
「何時もこんなの着て、寝てるの?」
「はい」
爽やかすぎる。あたしなら目が覚めてしまいそう。
「お着替えを手伝いましょうか?」
「いいえ」
そこはきっぱりと断る。
「ま、上様ではないのですから、ご自分でなさって下さいね」