イケメン大奥

「おとなしくなんて出来ない……」

あまりに近くにレイを感じて、息遣いまで感じてしまって、身体全体が震えている。


「ここまで来た度胸は何処に行ったのでしょう?」

意地悪しないで。

ローブの合わせ目がほどけてきて、レイの胸があたしに触れそうだ。汗の匂い。レイの指があたしの襟元に伸びる。



「不思議ですね」

傾けた顔の耳から首、鎖骨にかけてが、骨っぽくて太くて、やっぱり男なんだ、と思う。

 

あたしの耳が熱くなった。



レイはあたしの白シャツの襟元のボタンを外す。


耳元の熱さが喉に移っていく。震えるあたし。鼓動が速くてレイの声がするたびに速くなるのが分かる。耳の奥で、どくどくと音が響いている。

包帯をした両手の手首も、熱を帯びてくる……。
 
ほわんとしたあたしの額を、レイの指が小突いた。


「不思議なほど、男装が、似合っていませんよ」

 

あたしの頭のうしろにレイの手が触れて、くらっとしそうになった時に髪がほどかれたことに気づく。長い髪が解けて広がる。


「本当に男性経験がないのですねぇ」

クスクス笑い。

 
からかってたの!?


「また逢えて嬉しいんですよ」

 


< 137 / 190 >

この作品をシェア

pagetop