イケメン大奥
「おとなしくなんて出来ない……」
あまりに近くにレイを感じて、息遣いまで感じてしまって、身体全体が震えている。
「ここまで来た度胸は何処に行ったのでしょう?」
意地悪しないで。
ローブの合わせ目がほどけてきて、レイの胸があたしに触れそうだ。汗の匂い。レイの指があたしの襟元に伸びる。
「不思議ですね」
傾けた顔の耳から首、鎖骨にかけてが、骨っぽくて太くて、やっぱり男なんだ、と思う。
あたしの耳が熱くなった。
レイはあたしの白シャツの襟元のボタンを外す。
耳元の熱さが喉に移っていく。震えるあたし。鼓動が速くてレイの声がするたびに速くなるのが分かる。耳の奥で、どくどくと音が響いている。
包帯をした両手の手首も、熱を帯びてくる……。
ほわんとしたあたしの額を、レイの指が小突いた。
「不思議なほど、男装が、似合っていませんよ」
あたしの頭のうしろにレイの手が触れて、くらっとしそうになった時に髪がほどかれたことに気づく。長い髪が解けて広がる。
「本当に男性経験がないのですねぇ」
クスクス笑い。
からかってたの!?
「また逢えて嬉しいんですよ」