イケメン大奥

「それは初耳だな」

というよりも、続けて大奥に来た上様が殆どいないのです。

レイの言葉に、あたしは再び大奥へ来た事がとても稀な事だと思い知る。


普通はあり得ない事をごり押しでしてしまった。

これから、あたしの手首の傷は、このまま悪化していくのだろうか?



「包帯を解いていいですか」

レイの申し出に両手首を並べて差し出す。

包帯を解いて傷跡を見てみると、レイの唇から安堵の息が漏れた。

「化膿しているようではありますが、手当のおかげで腫れは引いてきているみたいですね」

「良くはなっているの?」

「はっきりと申せませんが、大奥にいる間は少しずつ傷は良くなっていくのではないかと……予想なのですが」



あたしの頭の中にもある予想が浮かぶ。


大奥を出たら、この傷は再び無くなるのではないの?
そうして、
次に大奥に来る時には、また傷が現れるのでは……???


そして今度、大奥に来た時には傷跡はもっと悪化している……。


この大奥はリアル世界の時間のゆがみによって出来たもの。

だから時間は繋がっている、全然関係ないわけじゃない。



そんな気がする。






< 139 / 190 >

この作品をシェア

pagetop