イケメン大奥

「わたくしは大奥に初めて来たのは少年のとき、それから大奥から出た事はありません。そのせいか、この傷がなぜ悪化したか分からないのです」

レイが申し訳なさそうに頭を下げる。

あたしの包帯を新しい包帯に替えてくれながら、古い包帯に付着した黄色い体液のしみ、血の跡に、レイは心が痛むようだ。


「大奥での掟とはいえ、わたくしは酷い仕打ちをあなたにしてしまったのですね」


悪いのは、あたしだ。
しても良い事と、してはいけない事の区別が分からなかった。

あたしにとって、この大奥は未知の世界なんだ。

他の人にも
相談すべきだったんだ……。



それにしても、ここへいざなったハルは、

この事を知っているのだろうか?

大奥とリアルな世界を渡り歩いているハルが、知らなかったの?


そこまで考えると、あたしは怖くなった。


あたしはハルが礼儀正しく聡明そうで、表使という権威ある職にある、
それだけで、ハルを信用したんじゃないか?


フェンシングのときに、

ハルとは出会い、少し話を交わしただけだ。



ハルは、

本当の思惑を隠してあたしを大奥へ招き入れたのではないか???
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