イケメン大奥

『素直で優しい上様』とハルに褒められて、あたしはいい気になっていたのかもしれない。


裏を返せば『御しやすい、コントロールしやすい上様』、

そういうことではないの?


キヨがフェンシングでレイと決闘したときに、ハルの事を

「食えない奴だから好かん」

そう言っていて、

ただ優秀なハルを僻んでいるだけだと思っていた。


意外に(というのは失礼だけれど)

キヨのハルへの評価は的を得ていたのかもしれない。


ここまで考えてから
あたしは、キョロキョロと周囲を見渡す。


ハルはあたしの心の中を読み取ることが出来る。

ここに行くように告げたのだから、
あたしを見張っているのは当然のことかも。



「どうしましたか?」

部屋のドアから目を離せないあたしに、レイが不思議な顔をする。


「ここに居ることが、誰かに知れたらと不安なんですか?」

あたしと共にベッドの端に座り、

肩を抱いてくれる。



意地悪だけど、肝心なときに本当に優しく、

心を気遣ってくれる、レイ。


 
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